
ヨーロッパ退屈日記
ヨーロッパ退屈日記
八月いっぱいで今の事務所を引き払い、すぐ近くに引っ越しをすることになりました。店の改装工事と引越の準備に追われていて、事務所はなんだかひっくり返っているし、やらなきゃいけないことは満載だし、そわそわしてしまって、毎日落ち着きません。
去年の自宅に引き続き、事務所も引っ越すものですから、周りの人からは、よほどの引っ越し好きと思われているようです。
そんな中、ある編集者に頼まれてWEBマガジン用に一週間、日記を書くことになりました。生活に関することならば何でも良いとのことだったので、毎日、誰と会ったとか、何を食べたとか、他愛もないことを書き連ねましたが、日々の生活を振り返る上で、いろんな発見もあったりして、楽しい作業でした。自分だけでなく、人の日記にも興味が湧いてきて、連載が終わった後も、時折そのWEBマガジンのサイトをチェックしています。
ふとしたきっかけで日記に興味を持っていると、先日、ある銅板画家が、十年近く描いているという絵日記を拝見させていただく機会がありました。青いボールペンで、毎日一ページずつ描かれた絵は、表現の細密な線画の時と、ラフに描かれた素朴な線の時など、その時の心情が絵を介して、直観的に伝わってきました。インキで黒くなった指を見て、きっとこの人は描かずには、いられないんだろうなと思い、なんだかすっかり感動してしまいまして、お店のオープンに合わせて、作品を一つ作ってもらうことなりました。
どんな作品ができてくるのやら、またそわそわです。
ヨーロッパ退屈日記
二十代と三十代前半のスタッフに「伊丹十三知ってる?」と聞くと、「誰ですか?」と口を揃えて言われてしまいまして、いささかがっかりしました。過去の人なんですかね。ちなみに、私がこの日記の中で一番好きな話は、耳にバナナをいれた紳士の話です。
(京都府建築士会 京都だより2018年10号掲載)
