東京オリンピック1964
東京オリンピック1964
二年後に開催される予定の東京オリンピックは、国立競技場の問題や五輪エンブレム盗用疑惑に始まり、最近では、意味があるのか良く分からない都知事の事業見直しで、五輪メイン道路の工事が進まないなど、開催をちょっと危ぶむ声も出ています。
今年の冬季オリンピックも、安部首相が行くとか行かないとか、平昌の会場が極度に寒いとか、緊張した政治のかけひきやネガティブな報道が繰り広げられました。
複雑な世界情勢と商業化されすぎたパフォーマンスに、いささかシラける大会になるのかと思いきや、終わってみると日本勢がメダルを十三個も獲得し、正々堂々と戦った選手の清々しさが印象的に残る大会となりました。
小平奈緒の素晴らしいゴールや、ハイスピードで三つ子のように、ぴたりとそろった走行を見せた女子のパシュートは、鋼のようなメンタルで成果をきっちり出した結果なのでしょうが、その裏にある地道な努力は、計り知れないものを感じます。
その昔、東京オリンピックのときに書かれた、三島由紀夫の文章が印象的です。
「さっき神のようだった選手は、こうして会ってみると、風貌、態度のどこにも人間離れしたところはない。むしろ休息時の選手の顔に浮かんでいるその平均的な日本人の日常的な表情と、あの神業との間をつなぐ、「練習」という過酷な見えない鎖が感じられる。それは、神と人間をむりやりに結びつける神聖な鎖なのだ」。
競技施設に問題があろうが、世界情勢が不安定であろうが、アスリートの姿に変わりはないのかもしれません。次回の東京オリンピックも、人の心を動かすような、日本らしい勝ち方を期待します。
東京オリンピック1964
フォート・キシモトは岸本健が率いるスポーツ・フォト・エージェンシー。一九五七年創業以来、スポーツ専門の写真集団として、オリンピックのほか、FIFAワールド・カップ、世界陸上など世界のトップレベルの大会を撮影し続けています。一九六四年に東京が見た「夢」を、「当時の写真」「当時の文章」で再現した本。
(京都府建築士会 京都だより2018年4号掲載)