
持ち帰りたいインド
煙草の匂い
うちの店はビルの3階に入っている。
時折、店の外の廊下や階段から煙草の匂いが店の中へ入ってくることがある。
その瞬間、イラっとして眉間にしわが寄る。嫌いな匂いではないのだがマナー違反的な感情が沸く。と同時に若い頃のことを思い出す懐かしい匂いでもあるので、少し気分がおさまる。
つい30年ほど前まで、煙草は大人の嗜好品として愛され、どんな場所でも吸うことができた。駅のホーム、職場のデスク、トイレの中、電車やタクシーの中でさえも。私も若い頃は普通に罪悪感など感じず街中をくわえ煙草で歩いていたりした。煙草は大人や映画スターへの憧れの存在を自らへ置き換え、カッコをつけ大人っぽく見せるためのツールだった。
しばらくすると煙草が手放せなくなったが、15年ほど前のある日きっぱり禁煙した。それから1度も煙草を吸っていない。煙草に含まれる税金額を知り、払うのが馬鹿らしく感じたからだ。
と言いながら、今晩も350mlのビール2缶(税金144円分)を飲み、ご機嫌になって原稿を書いている。
(京都府建築士会 京都だより2017年4月号掲載)
