
ELEMENTS あちら、こちら、かけら
建築好き、写真も好き、だから建築カメラマンになった。
それ以外理由が無いと思っていた。
ところが、この原稿を書くためのネタを考えているうちにあることに気づいた。
建築物は基本的に移動しないので撮影者が現場へ行く必要がある。新幹線や高速バスでの移動もあればホテルに泊まることもある。
移動距離の遠近はあるが、現場に向かうことはある意味「旅」とも言える。
撮影の空き時間には周辺を散策して、小さな発見、美しい風景などに遭遇することもある。初めての場所では街の雰囲気を感じたいので駅から現場まで徒歩移動をする、これはもうほとんど「旅」に近い。

建築好き、写真好きだから選んだ建築写真の仕事だが、知らず知らずのうちに、そこには、もうひとつの「好き」である「旅」も含まれていた。
「ELEMENTS あちら、こちら、かけら」(野又穫 著)
2011年3月に新聞連載のために描かれ続けたドローイング作品80点が一冊にまとめられている。夢の中の世界のような空想の建築や構造物が繊細なタッチで柔らかく描かれていて、震災後大きく揺さぶられた心情を、ドローイングと数行の文字で表現されている。装丁は一見シンプルだが、紙質、印刷、綴じ方などかなり凝った作り。
