フィンランド 光の旅
建築写真を撮り始めて十数年。
季節、天候、方位、時間、環境などによる、光の色、明るさ、強さなどを意識し、記憶するようになったと感じる。
建築カメラマンには、多くの撮影経験が必要だと言われていることと関係しているのかもしれない。いろいろな物件を撮影し、頭の中にデータベースを作ることで、アングルや光の状態で良かったものを、撮影中の物件と当てはめることが建築の持つ美しさを写し出すヒントになることを日々実感している。
最近のテーマは光をもっと注視し、状態を見極め、光の種類のデータベースの充実を目指している。
「フィンランド 光の旅」(小泉隆 写真・著)は、白夜とカーモス(冬期の太陽が昇らない日)の国として知られるフィンランドの高緯度ならではの情緒的な光と建築をテーマにしている。
美しい装丁で紙質も心地よく、写真が多いのも魅力。教会や図書館などの建築紹介の他、空や湖、森、キャンドル、雪のイベントなどフィンランドならではの風景にも触れられており、空気の澄み切った晴れた冬の日に、太陽の光のもと何気なく眺めるように読むと、本の中の世界と同化し、フィンランドを感じられるかもしれない・・・。