沖縄島建築 建物と暮らしの記録と記憶
沖縄島建築 建物と暮らしの記録と記憶
今年で沖縄が日本に本土復帰してから五十周年になるのだそうです。そういう関係か沖縄ではいろいろなイベントが企画されています。久しぶりに沖縄に行く用事ができたので、関連本を探していたら、「沖縄島建築」なる本を見付けました。がっつりとした建築の本でもなく、かといってヘリテージの本というわけでもない、ちょっと異色の建築本。沖縄の十件の建物の歴史をめぐりながら、アメリカに占領された戦後の政治的な背景や社会性、その中でも決して消えなかった琉球の文化や民俗性みたいなものが見えてきます。
沖縄がなぜコンクリート建築ばかりになったのか、そしてまた今、木造住宅がなぜ見直されているのか。建物の所有者たちのインタビューを交えた考察がなかなか面白いです。人というフィルターを通すことで、建築をデザイン性だけで語るのではなく、社会学や民俗学みたいな観点を交えて、深く掘り下げることで、建築の本当の歴史的価値が見えてくるような気がしました。
(京都府建築士会 京都だより2022年10月号掲載)
沖縄島建築 建物と暮らしの記録と記憶
沖縄の名だたる建築を集めた本ではありません。無名の建築も多いのですが、建築が土地に宿ることで、「沖縄」の歴史と暮らしが表れる、気づきの多い土着的な建築の本となっています。