THIS IS WATER
THIS IS WATER
今から十五年ほど前、外資系企業に勤める友人から、「ぜひこれを読んで。」とスタンフォード大の卒業式でのスティーブ・ジョブズのスピーチ原稿の翻訳が送られてきました。
「Stay hungry, Stay foolish.」は、今では有名なスピーチですが、「感動して泣いたビジネスマンは多いのよ。」とその時、友人から聞きました。
米国の大学では、卒業式に学外の有名人を招き、名誉博士号を授与し、その返礼にスピーチをしてもらうコメンスメント・スピーチ(祝辞)というものがあるそうです。人生の先輩として、これから社会に出る若者に励ましの言葉を送るアトラクションとして、笑いや工夫を凝らしながら、人々を感動させる名スピーチが多数あります。そのコメンスメント・スピーチの中で、米国でスティーブ・ジョブズよりも人気があるのは、作家のデヴィッド・フォレスタ―・ウォレスのケニオン大学でのスピーチと言われています。二〇〇八年に彼は自殺してしまいますが、彼のスピーチが日本訳された小さな本があります。
タイトルの「これは水です。」は、日本のことわざでは、「魚の目に見えず、人の目に空見えず。」といった感じ。励ましの言葉というよりも、生きることの難しさを、自分の言葉で語ったから、共感を得たのでしょうか。
その中の一節一節が、今の世界と重ね合わせて身に沁みます。ぜひ、読んで見てください。
(京都府建築士会 京都だより2022年5月号掲載)
THIS IS WATER
「初期設定からの脱却」、「選択するということ」、「本当の自由」、心に引っかかるキーワードがたくさんあります。