
やさしい文学レッスン
やさしい文学レッスン
数年振りに、バイオリニストの友人の家を訪ねることにしました。友人宅には、小学三年生の子供がいて、あまりテレビを見ない家庭だからでしょうか、小学校に上がる前から、大人の会話にきちんと参加できる興味深い子供でした。
私はこの子と話すのがとても好きで、友人に会うのも楽しみのひとつですが、久しぶりにあった彼が、どのように成長しているのか、それも会う楽しみのひとつでもありました。
数年前に会ったときはコロコロしていたFちゃんは、すらりとした好奇心溢れる少年に成長していました。親の仕事の音楽には全く興味がないようで、モノづくりが大好きなのだとか。毎年の夏休みの自由課題で何を作るかというのが、彼の最重要事項のようで、二年生と三年生の自由課題で作った木のピストルや帆船の模型を見せてもらいましたが、これがなかなかのもの。まだほど遠い夏休みに、何をつくるかもう決めているようで、現在、図面を描きながら構想中とのこと。自分の作った作品をとても丁寧に解説してくれたので、「家の模型を作ったりすることに興味ある?」と尋ねると、「どうやったら家は建てられるのですか。」と真面目な顔をして、いきなり敬語で質問してきました。自分で考えて物を作るのがとても好きなので、家や家具を作るのに大変興味があるのだそうです。
友人は音楽に興味を持って欲しいのかもしれませんが、人手不足を日々嘆いている私としては、子供とはいえ、こういう人材が喉から手が出るほど欲しいと思うのです。
(京都府建築士会 京都だより2022年3月号掲載)
やさしい文学レッスン
インターナショナルで国際バカロレアの文学教師を勤める著者が、文学作品をより深く味わうための「読み」の手法を二十に分けて解説。


