岡潔 数学を志す人に STANDARD BOOKS
岡潔 数学を志す人に STANDARD BOOKS
最近ベストセラーになっているフランスの人口統計学者のエマニュエル・トッドの新刊、「老人支配国家 日本の危機」という本をキンドル買いして読んでいると、アマゾンのリコメンド欄にやたらと「岡潔」(おかきよし)の著書が出てきます。誰かなと思っていたら、うちの書店の本棚に、岡潔の本がありました。
岡潔は、ここ数年、再評価をされている数学者です。彼は世界的な数学者であると同時に、日本人の心性や情緒に洞察を深め、多くの文章を遺した随筆家でもあります。名言と奇行の人とも言われ、教育とは詰め込みだけの頭の良い人間をつくることではなく、人の中心は情緒にあり、日本人が本来もつ情緒がいかに美しいか、そして戦後の社会でその豊かな情緒を失いつつあることに警告を鳴らし続けた人でもありました。当時、交感神経を締め付けるからという理由で帯を締めなかったり、周りには奇行と思われていた部分も、今となってみれば、いち早く脳科学や自律神経と知力を結び付けて、自ら実践していた結果だったのでしょう。
エマニュエル・トッドの警告よりも、時代が追いつけなかった天才の言葉のほうが、今の私たちには響く気がします。
(京都府建築士会 京都だより2022年2月号掲載)
岡潔 数学を志す人に STANDARD BOOKS
STANDARD BOOKSのシリーズは、平凡社が提案する新しい随筆シリーズです。科学と文学、双方を横断する知性を持つ科学者・作家の珠玉の作品を集め、一作家を一冊で紹介しています。