ダッチ・リノベーション オランダにおける建築の保存再生
ダッチ・リノベーション オランダにおける建築の保存再生
少し恥ずかしい話なのですが、古い建築を改修する機会が増えてきて、新築を造ることを前提にしか、今まで建築を勉強していなかったことにふと気づき、改修設計の役に立てばと思って、五・六年前からヘリテージというキーワードに興味を持って取り組んでいます。仕事以上に熱心になるのは、文化財や古い建築が好きというよりも、建築が経てきた時間や素材の古さへの対峙を学ぶことにより、新築にはできない新しいものができる、そんな可能性を感じているからだと思います。
そんな中、昨年参加した京都工芸繊維大学が始めた社会人向けのヘリテージアーキテクト養成講座で、仕事そっちのけでリサーチしていたのは、海外のヘリテージの改修事例。オランダは笠原先生がやっているから、他のところを調べようなんていろいろネットでググっていたら、これがめちゃくちゃ面白くて、すっかりはまってしまいました。先日、プリツカー賞をとったフランスの建築家ラカトン&ヴァッサルが設計した、造船所を複合文化施設にしたFRAC Nord-Pas de Calaisや、コールテン鋼のキューブがグサリとささったフランスの製塩所、ロシアの馬小屋の廃墟をそのまま展示している博物館など、わくわくする建築がヨーロッパには、いっぱいです。時間に積み重ねられた建築の層みたいなものが、都市を創っている感じがして、改修や都市の在り方については、日本は西欧からまだ、学ばねば、ならないことがあるのではと思うのです。
(京都府建築士会 京都だより2021年9月号掲載)
ダッチ・リノベーション オランダにおける建築の保存再生
日本の十分の一程の国土に五万件以上の国の文化財が建つオランダ。歴史的価値と新しい魅力が共存する大胆でユニークな改修事例を紹介。文化財の活用に関する社会的な構造についても触れられていて、とても勉強になります。