五十八さんの数寄屋
五十八さんの数寄屋
政権が代わって、新しい内閣の人事のことでテレビは持ち切りです。政治のことはさておき、防衛大臣のおじいさんが岸信介などと取り上げられて、数年前に見学に行った、吉田五十八が設計した御殿場の東山旧岸邸のことをふと思い出しました。
現在、東山旧岸邸は御殿場市に寄贈されたあと。和菓子の虎屋のグループ会社が、指定管理者として管理運営を行っています。ちょうど最近、鹿島出版から「五十八の数寄屋」という本が出て、読み終わったところだったので、GOTOキャンペーンでどこか行くなら、再び訪れたいと思っていたところでした。
岸邸の詳しい解説は本に預けるとして、その本の中で、ヨーロッパやアメリカを回った吉田五十八が、日本に帰ってきて語った言葉が印象的です。西欧の建築に圧倒されたものの、世界と対峙するためには西欧に習うのではなく、伝統を踏まえた新しい日本建築によって、世界と対抗しようとした決意が語られています。先人のこういう言葉は、読んでいて、背筋が伸びる思いがします。吉田が書いた随筆集、「饒舌抄」もまだ中公文庫から出ているので、読書の秋にこの本と合わせて、どうぞ。
(京都府建築士会 京都だより2020年11月号掲載)
五十八さんの数寄屋
伝統的数寄屋を近代化し、近代数寄屋を生み出した吉田五十八の設計作法を、最晩年の住宅作品・岸信介邸を中心にひもとく。