見たことのない普通のたてものを求めて
見たことのない普通のたてものを求めて
東京オリンピックが来年に延期と決まって、六月に計画しているベトナム旅行がいよいよ怪しくなってきました。建設現場は動いていますから、私たちの仕事はテレワークなどとは無縁ですが、予定していた会議や集まりがキャンセルになると、久しぶりにゆっくりと本を探す時間ができます。仕事以外に時間がさけるというのは、私にとっては、不幸中の幸い。ネットでいろいろ検索していると、以前から気になっていた建築家の宇野友明氏の本を発見。
愛知県の知人から、宇野さんの名前を聞いたのは、もう随分昔のことですが、その知人が会う度に、あまりにも宇野さんの話をするものだから、一度お会いして見学をさせてもらわねばと思っていたところで、早速、読んでみることにしました。
結果から言うと、お世辞抜きにとても良い本。建築を伝えるという手段を自身の作品写真で済ますのではなく、全部文章で書き起こしているところに、何かをどうにか伝えたいという真摯な気持ちが、ひしひしと伝わってきます。材料のこと、建築に対する姿勢、職人さんたちの協働など、知人が宇野さんについて熱く語っていたことを思い浮かべました。
さすがにこの本、マニアック過ぎて、普通の書店には置いていないのではないかと密かに自負しております。
(京都府建築士会 京都だより2020年5月号掲載)
見たことのない普通のたてものを求めて
本物の素材にこだわり、建具一つにも既製品は使用しない。カタログの寄せ集めでしかない現代の家づくりを否定し、本物の建築を追求する 宇野友明のエッセイ集。
「不確実な海にダイブする」「愛」「ポンコツ」「死の家」をはじめ、宇野友明の生き方と仕事観を独自の文章でつづった全百編を収録。