河童が覗いたヨーロッパ
河童が覗いたヨーロッパ
大学時代に読んだエッセイで真っ先に浮かぶのが、沢木耕太郎「深夜特急」、伊丹十三の「女たちよ」、妹尾河童の「河童が覗いた〇〇〇(ヨーロッパとかインドとか)」。なんとなく懐かしくて、そんなエッセイもお店に置いています。
私たちの世代は、大学時代にこの旅のエッセイを読んで、バイトをしてお金を貯め、バックパッカーとして海外旅行するというのが、その時代の学生のちょっとしたトレンドでもありました。地球の歩き方が、投稿型の口コミ情報誌で、本でしか海外の情報を得ることができなかった時代の話です。
この三十年間ですっかり世の中は変わりました。インターネットが当たり前になり、SNSなどの情報網のおかげで世界との距離が格段に縮まりました。そんな影響でしょうか、若者の海外渡航は、リピーターと全く興味が無い人たちの二極化が進んでいると言われています。海外旅行に行く若者が年々減っていると聞き、身近な二十代に尋ねると一度も海外に行ったことがないというではありませんか。建築を志す若者でも、そうなのかといささか不安に感じました。
京都市内ではインバウンドという言葉が飛び交っていますが、二〇一八年、観光庁は「若者のアウトバウンド推進実行会議」なるものを立ち上げたそうです。国も、若者のそんな傾向を深刻に受け止めているんですね。
建築に、旅は特に必要だと思うんですが…インターネットは、一見に如かず、「可愛い子には旅をさせよ」。まだ海外に行ったことがない若者が身近にいたら、旅のエッセイをぜひ薦めていただけたらと思います。
(京都府建築士会 京都だより2019年9月号掲載)
河童が覗いたヨーロッパ
エッセイというよりも、イラスト日記に近いのですが、緻密な絵から旅の内容の濃さが感じ取れます。改めて読むと文章も手書きでしたね。さすが何年間も読み継がれる本だと思います。