
再編建築写真文庫
再編建築写真文庫
学生時代、設計事務所でバイトしていたのですが、最初に与えられたのが書庫の整理でした。そこには一九六〇年代からの新建築や今はもうなくなってしまった、「狭小住宅」「都市住宅」といった古い雑誌から、ジョン・ラスキンの「建築の七灯」、ニコラウス・ペヴスナーやヴィオレ・ル・デュックといった建築史に出てくる名著がたくさんあって、書庫の整理とはいえ、そういう雑誌や本に目を通すだけでも大変勉強になりました。こんなんでお金もらっていいのかなどと、申し訳なく思ったものです。
その中に、バーナード・ルドフスキーの「建築家なしの建築」という本がありました。タイトルもぐっと惹きつけるものがあっていいのですが、世界各国の名もない建築にいたく感動してしまって、「バナキュラー」という言葉を初めて知った本でもありました。事務所にあったのは、一九六四年にニューヨーク近代美術館で開催された展覧会の内容をまとめたもので、当時は珍しい正方形の製本で表紙のイラストが素晴らしい本でした。鹿島のSD選書から同じタイトルで本が出ていますが、レイアウトが変わるとなんか魅力が半減してしまって…またあの同じデザインで、誰かが再出版してくれないかと密かに思っています。
(京都府建築士会 京都だより2019年1月号掲載)
再編建築写真文庫 都築響一編
建築家で数寄屋建築の研究者であった北尾春道が昭和二十八年から昭和四十五年の十七年間に百四十五巻に渡って出版された「建築写真文庫」の商業写真を再編したもの。ある意味、これも現代のバナキュラーかもしれません。